「彼くんマンガ」がなぜ炎上しやすいのかについての考察

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生きづらさを抱えている女性のエッセイ漫画において、なに食わぬ顔で「そんな私にも彼くん(=彼氏)がいます」というフレーズが出てくるストーリーがある。これは、ネット上では「彼くんマンガ」と呼ばれている。

一見すると特に問題ない内容だとは思われるが、ことSNS(とくにtwitter)において、この手の彼くんマンガは白ハゲお気持ち漫画同様に荒れやすいコンテンツである。

なお、補足だがエッセイマンガだけでなく、ブログ記事やyoutube動画など、マンガ以外でも彼くんが登場する場合は、彼くんマンガ動揺に荒れやすい傾向がある。

今回は、この彼くん漫画がなぜ荒れやすいのかについて、個人的な見解と考察をまとめるとする。

 

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彼くん漫画が炎上しやすい理由

「助けられやすさ」において男女差があることで物議を醸しやすい

彼くん漫画はその性質上、彼くんが彼女(=作者自身)を生活面、経済面で助けている。そして、彼くんの援助があるので作者は問題はあるものの、元気に生活を送れている…というテイストで描かれる。そして、この漫画に対して共感や応援の声が集まりやすく、一気にバズる傾向がある。

しかし、一気にバズるということは言い換えれば、この漫画が暗に表現していることを深読みしてしまう層にもマンガが届いてしまうことと表裏一体である。

つまり、世間で生きづらさを覚えつつも、その生きづらさを理解されない男性。それも、生活力も経済力もルックスもお世辞にもあるとは言えず、女性の縁にも恵まれない男性の目にも届いてしまった結果、炎上してしまうのだ。

 

もちろん、これは単純に見ればモテない男性の僻み、やっかみと片付けられがちだと思う。しかし、深読みしてしまう人の主張にも賛同できるものはある。

それは「男性と女性とでは、世間・社会において助けられやすさに格差がある」ということだ。

わかりやすく言うと、生活で困っていることがあると、

  • 男性は「自己責任だ」「男なんだから自分で何とかしなさい」と厳しい意見が出やすい。
  • 女性の場合は「他人や公的機関・支援団体等に助けを求めればいいよ」「一人で頑張ろうとしなくてもいいんだよ」と優しい意見が出やすい

と、いう真逆の声がある。結果、男性は周囲からの援助をなかなか受けられないが、女性の場合は身近な人の援助(=この場合は彼くん)を受けて、生きづらさが緩和される。

また、多くの男性が「男性は女性を助けなければいけない」という価値観・倫理観を持っているため、生きづらさを抱えている女性を助けることにそこまで抵抗を感じない。しかし、生きづらさを感じている男性には、男女関係なく積極的に助けたいとは思えない人間だとみなしてしまう。

結果、男性と女性とでは助けられやすさに格差が存在している…という社会福祉やジェンダーなどの議題につながりやすいからこそ、彼くん漫画はネット上では可燃性の高いコンテンツになるのだ。

 

なお、助けられやすさに関してほかに例を上げるとすれば、女性・子供・老人・障害者・発展途上国で貧困や飢えに苦しんでいる子供・犬猫などの愛玩動物などは、普通の男性よりも多くの人が「助けたい」だとか「助けなければいけない」と思いやすい対象である。

そうした、助けられやすさの格差のピラミッドの底辺にいるのが、生きづらさを抱えるモテない男性なのだ。

 

彼くんに生活の多くを依存していることに疑問の声が集まりやすい

普段の生活で生きづらさを覚えている女性が、彼くんの援助を受けて生活を成り立たせている…というストーリーに対して、やや言いがかりに近いとは思うが、「生活力のある彼くんに一方的に依存して生きている」という見方をする声が集まりやすい。

つまり、自立できていないこと、自分一人の力で生活を成り立たせようとせず、彼くんの生活力のおかげで生活できているだけに過ぎないことに対して、批判や疑問の声が集まってしまうのだ。

もちろん、パートナーの力があることで生活ができていること自体、闇雲に否定はしないし、これだけではただ仲睦まじく暮らしているだけの漫画というのが率直な感想だ。

しかし、ここで「彼くんのおかげ」ということを無視して、まるで自分一人の実力で今までの実績なり手柄を獲得できたという作風になると「いや、それは彼くんの援助があったおかげだろ?勘違いしているのでは?」というツッコミが入りやすくなる。

「彼くんのおかげもあるけど、結局は(生きる上でのハンデはあるけど)自分の実力である」と作者本人が慢心しているように見えてしまうために、荒れやすいのだ。

 

悪気はないがノロケ・自慢に見えてしまうので荒れやすい

最後に、彼くん漫画はその性質上、最後は(というか中盤から)ハッピーエンドのストーリーになる。

「生きづらさを抱えていた私が、彼くんとの出会いもあって今は幸せな生活をしています」というハッピーエンドに対して、「ただ自慢したいだけでは?」「ノロケでは?」というひねくれた意見が集まりやすいコンテンツとも言える。

もちろん、ひねくれずに真っ直ぐに作品を見れる人であれば、わざわざ自慢だとかノロケだとか解釈することはまずない。「いろいろあったけど幸せになってよかったね」という類の感想や、共感・応援の声が集まるものだ。

しかし、上でも触れたように、バズった結果ひねくれている人の目にとまってしまうと、ノロケや自慢という、本来想定していた反応とは違う声が集まってしまうのだ。