精神的に不安定な人…つまり「メンヘラ」な人は、自分と同じくメンヘラな人の精神的な支えになろうとしたり、メンヘラな人を悩みから救おうとする傾向が見られる。
しかし助けるという尊いはずの行為が、実は助ける側のメンヘラの自己満足のための行為に成り下がっていたり、結果として共依存関係を構築するなど、双方とも救済とは程遠い結果になってしまうことがある。
こうした盲目的に他人を助けたがる人のことを「メサイアコンプレックス(救世主妄想)」と呼ぶ。メンヘラの人は、このメサイアコンプレックスと関連深い人が多いと感じる。
今回はメンヘラとメサイアコンプレックスのことについて、個人的な見解を語ろうと思う
自分が癒されたいためにメンヘラを助けたがるメンヘラ
誤解を恐れずに言えば、メンヘラの人の中には個人的な精神的安心感や充足感を得たいがために、メンヘラな人を助けようとしているケースがある。
自分が社会から必要とされていないことに悩んでいたり、他人から受け入れられないことに悩んでいる。
その悩みを解消する方法として、確実に自分のような価値の低い人間の手助けでも、ありがたがって受け入れてくれそうな心が病んでいる人にターゲットを絞って、安直な手助けや救済ごっこをしているように見えるのだ。
もちろん、助けられる方からすれば自分に向けられた善意であれば、どんなものであっても受け取ってしまうだろう。また、善意を拒絶すること自体に強いストレスを感じるものなので、つい受け入れてしまいがちだ。
しかし、そうした善意を断れない状況を利用して、自分の弱った心を癒したいがために、安直に人を救済する行為は果たして本当にその人のためになるのか…については疑問が残る。むしろ、ただのありがた迷惑や善意の押し売りになってしまう危険性があると感じる。
自分の思い通りに助けられないとストレスを感じて関係が悪化
自分が救われたいためにメンヘラを助けるメンヘラにとって、助けている人の調子が自分の思いどおりによくならない状況になると不満やイライラを感じやすい傾向がある。
ほかにも、善意の中に隠された自己満足を見透かされて救済を拒絶するようになると「自分はこんなに尽くしているのに!」と逆上することもある。
しかし、ここで関係を切ろうものなら、自分の救済のために必要な相手を失い自己救済が遠のく。新たに誰か救いの手を求めている人を調達するのにも労力を要する。
そのため、助ける側のメンヘラは今助けている人に不満を感じつつも、その人との関係を解消しない。つまり、共依存関係になるように仕向けるのである。
助ける相手が完全に助からないように傷の舐め合いに持ち込む
助ける側のメンヘラからすれば、助けた相手が自分の手助けを必要としなくなること…つまり、完全に救済できて自分の手を離れて自立するのを嫌がる傾向がある。
誰かを助ける行為そのもので自分の心の隙間を埋めていたので、自立されてしまえば心の隙間は埋まらず苦痛を味わう。
そのため、助ける側のメンヘラは傷の舐め合いのような馴れ合いの関係に持ち込もとうとする。つまり、いつまでも相手が精神的な不安定さを持ち続けて、社会の中で自立しづらい状況であり続けるように、その場しのぎの優しい言葉や態度をとって堕落と破滅に誘う。こうなるともはや救済者ではなく悪魔である。
メンヘラ同士の助け合いから共依存へと発展するリスク
メンヘラ同士で起きる共依存関係のうちのいくつかは、助ける側と助けられる側の不健全で依存し合った関係だと思う。
そして、共依存関係の厄介なところは、お互いが何かしらの問題を抱えているものの、それを解消することを恐れていること。つまり、貧困、孤立、健康不安や社会復帰できない不安…などをずっと抱え続けたままの状態で暮らし続けることだ。
ひどい場合は、必要な公的な支援を受けることを助ける側のメンヘラが拒絶して「自分の支援だけで十分だ」と言い張ってしまうこともあろう。
中途半端な知識と自己満足のための使命感に突き動かされて、自分は良い事をしているように感じているかもしれないが、その実態は単なる偽善者でしかなく、新たな被害者を自らの手で生み出しているにほかならない。
最後に
もちろん、自分と同じ境遇の人に対してなんとか力になりたいと思う気持ちは否定しない。そういった善意があるからこそ、救われる人、心が楽になる人がいるのも事実だろう。
しかし、ロクに自分の心身の健康を正すこともせず、付け焼刃の知識で安易に他人を助けることが、必ずしも良い結果を招くとは限らないものだ。
人助けをする職業…例えば、医者や消防士などが厳しい試験や実習・訓練を数多くこなしてはじめて一人前の仕事ができるように、自分と同じくメンヘラな人の力になりたいのであれば、まずは自分の健康を取り戻し、そこから勉強することが大事であると感じる。
人を助けたいという独善的な善意や自分本位な使命感につき動かされた行動が、他人を助けられるとは到底思えない。そんな即席の人助けがうまくいくのは、せいぜいフィクションの世界の中だけであろう。
ということを述べて、今回はお開きにさせて頂く。