真面目に生きている人の中には、事実無根な噂や陰口を叩かれた経験がある人が多いもの。つまり「あの人は真面目に見えるけど、実は裏では他人に言えないような悪いこと、やましいことをしているような人に違いない」という誤解や偏見を受けてきたことは、一度や二度ではないと思う。
かくいう私も学生時代や社会人になってからも、「あの人が真面目にしているのは、自分よりも目上の人に気に入られようとしている。あの真面目さは、そういうずる賢さからくるものだ」と言われることが度々あった。(もちろん、やましいと思われるようなことはしてないし、単なる言いがかりに過ぎないことはこの場で弁明しておく)
今回は、「真面目なのに裏では…」と思われてしまうことについて、個人的な見解を述べさせていただこう。
真面目な人に劣等感を持つ人が「真面目な人には裏がある」と感じやすい
誤解を恐れずに言えば、真面目な人に対して「実は裏では…」という感想を持つ人は、自分自身に劣等感を抱いている傾向がある。
- 真面目な人より頭がよくない。賢くない。
- 礼儀作法がなってない。品性や品格がない。育ちが悪い。
- 人望がない、ロクな交友関係がない。
- 精神的に未熟である。ぐうたらである。
- 社会的地位が低い。恵まれた環境にいない。
など、およそ真面目とは呼べない自分の立ち位置に劣等感を持っている。
それが影響して、真面目な人が身近にいると、より一層自分の惨めさが際立ってしまい、強い劣等感を感じずにいはいられなくなるのだ。
「真面目な人と比較すると、なんて自分はだらしがなくダメな人間なのだろう…」と、自分で自分を責めてしまう苦しさがある。その苦しさから自分を解放するために「真面目な人ほど実は裏で悪いことをしているに違いない」と思い込もうとするのだ。いわば、防衛機制の一種であると言ってもいい。
「真面目=裏がある」と思い込めば自分の劣等感が小さくなる
自分に劣等感がある人にとって「真面目=裏がある」という考えを持つことは、自分が今まさに感じている劣等感を小さくするのに一役買うのだ。
みんなが憧れるような人でも、実は人間らしいドロドロとした部分があるとわかれば、真面目な人を前にしても、必要以上に緊張しなくて済む。
ぱっと見は人々の尊敬や憧れを集めているものの、それは仮の姿。裏では、およそ尊敬や憧れを集められないような闇の部分があるとわかっていれば、そんな人間にどうして劣等感を持つ必要があろうか(…いや無い)
表面的には真面目に見えても、どうせ腹黒で、狡猾で、真面目ぶっているだけの意地悪な人だと思うようにすれば、どこか自分と似たような不真面目な人間にも見えてきて、安心感すら覚えるようになる。
加えて、真面目そうに見える人でも弱点がある。その弱点を自分は見抜いていると思い込めるようになれば、「自分はみんなが真面目だと評価している人の本性を見抜くだけの目を持っている優れた人間だ」という、優越感も抱ける。
この優越感がクセになり、客観的に見れば不真面目であまり評価出来るところの無い自分の長所となり、プライドになる…という部分もあるからこそ、真面目な人に対してあらぬ懐疑心を向けてくる人は後を耐えないのだ。
真面目な人は意図せず劣等感を煽ってしまうことを知識として知っておこう
もちろん、真面目でいること自体はたいへん素晴らしい。真面目に生きている人に対して自分のいたらなさからくる不快感をぶつけることは、間違いである。不快感をぶつけるのは真面目な人ではなく、不真面目な自分自身であろう。
しかし、こうした綺麗事や正論ばかりで動かないのが、この世の中の不都合な現実だ。真面目に生きている人に罪はないが、それでもなお自分の真面目な生き様が意図せず他人の劣等感を煽っている…ということについて、知識として頭の片隅にでも入れておくと世の中を堂々を渡り歩けるようになると、私は考えている。
真面目すぎて人間味を感じないからこそ、あえて闇を見出そうとしている説
最後にガラっと変わるが、真面目すぎてあまりにも人間味を感じにくい人の場合だと、どうしても人間味らしいところを見出して安心感を得たいがために「この人には裏がある」と思い込む人が出てくることにも触れておく。
真面目すぎると、まるで聖人や出家した僧侶のように、どこか浮世離れしている人に見えてしまう。すると、どうしても人としての温かみというか、普通に感情をもって生きている人間のように見えなくなり、妙な不安を感じてしまうことがある。
そんなときに、「聖人っぽい人だけど、実は腹黒くてお金や恋愛に対して執着がある」という人間らしい欲望を感じる部分を見出そうとしてしまうこともある。
もちろん、これは下衆の勘ぐりそのものではあるが、下衆の勘ぐりをしなければいけないほどに、真面目な人というのは平凡な人と違う、強い個性の持ち主であるとも言える。
…と、いうことを語って今回はお開きにさせて頂く。