ヘタウマな絵と下手な絵の違いについて解説する

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ヘタウマというのは、一見すると絵の初心者が描いたような簡単なイラスト。上手か下手かで言えば「下手」な部類に入るが妙に味があったり、シンプルながらも表現したい特徴を表している絵を指す言葉である。

仕事柄デザインやイラストに関わることが多いので、いわゆるヘタウマなイラストを目にすることがあるのだが、ヘタウマ絵は描く前は簡単そうに見えて、実は想像以上にテクニックが必要‥という難しい画風であると私は思う。

今回はそんなヘタウマな絵とただ下手な絵との違いについて、個人的な見解を述べようと思う。

(※なお、ここでいうヘタウマ絵は人物や動物など、何かのキャラクターをメインにした絵として説明する)

 

ヘタウマな絵と下手な絵の違い

ヘタウマは線画が洗練されている。下手な絵は線画が雑

まず、ヘタウマ絵は線画の時点で洗練されている。線画もぶれていたり、ガサガサとすることもなく滑らかにに描かれている。必要な線を最小限しか使わずに表現しているのだ。

よく絵は足し算と言われるが、その中で必要な線(情報)を限りなく削ぎ落としていき、必要最小限の情報でキャラクターが今どんな状況にいるのか、どんな表情をしているのか、どんな行動をしているのかを的確に表現している。

一方で、下手な絵はまず線画の時点で雑である。ふにゃふにゃとしている、全体的に情報量が多く下手というよりは雑さ、荒っぽさ、洗練されてなさの方が目立つ。

また、人物の場合は曲がってはいけない部分で腕や膝が曲がるなど、人体の基礎的な骨格を理解していないであろうことが伺えてしまい、勉強不足感が否めない。人物を描くにしても、人体の骨や筋肉のつき方を理解していないため、ヘタウマに落とし込む時でもいい加減な表現になってしまう。初学者にありがちな違和感のある絵になってしまうのだ。

 

ヘタウマは表情豊か。下手な絵はワンパターン

ヘタウマ絵で描かれるキャラクターは、非常に表情豊かである。それも「笑う」という表情ひとつとっても

  • クスクスと笑う
  • ゲラゲラと笑う
  • 笑いたいのを我慢して笑う
  • 苦笑いしてしまう
  • 笑うしかない状態の時の笑い

など、多種多様な笑いをシンプルに表現できている。そして、見る人に今キャラクターがどんな感情や状況で笑っているのかを、的確に伝えられるように描かれている。

一方で下手な絵は、表情の描き方がワンパターン。「笑う」にしても「とりあえずなんか笑っていることは分かる」程度の情報量しかなく、見る人に具体的な表情や感情を伝えるにまで至っていない。

(下手な絵だけに)下手をすれば読み流されてしまうぐらいに、浅い表現になってしまっているのだ。

 

ヘタウマは全体のバランスが取れている。下手な絵は全体のバランスが統一されていない

ヘタウマなキャラは、言い換えればデフォルメ表現の一種であると私は考えている。

デフォルメは「意識的に表現を変化させる」という意味だが、ここではリアルな表現を簡略化することとして考えてもらえばいい。目をつむっている人を「(><)」という絵文字で表現することが、デフォルメのいい例である。

話を戻すと、ヘタウマな絵は顔といった体の一部分だけでなく、手の先や足の先に至るまで、全身を万遍なくデフォルメしても違和感が出ないようにバランスが取れているのが特徴的だ。

一方で、下手な絵は顔だけはデフォルメできているが、それ以外の部分がやけにリアル寄りだったり、丸っこい顔なのに体は角張っているなど、全体の統一が取れていない。(なお、あえてバランスを取っていないデザインである可能性はここではないものとする)。

全体の統一感がないからこそ、なんとなく雑で洗練されていない印象を与えてしまうのだ。

 

ヘタウマはカメラワークの使い方が多用。下手な絵はカメラワークがほぼ固定されている。

キャラクターがどのようにイラストの中に収まっているか、カメラワークの表現(煽り構図、俯瞰構図など)にバリエーションがあるか…という点でも、ヘタウマと下手な絵の違いはよく出ている。

ヘタウマな絵はキャラクターがいる場所や状況を表現するために、的確なカメラワークを利用している。キャラクターの顔一つ見ても

  • 横から見た顔
  • 下から見た顔
  • 上から見た顔
  • 遠目から見た顔

など、どの角度から見ても、そのキャラクターとわかるように描いている。当然、その角度にあった背景をしっかりかけるので、極力違和感のない絵や迫力のある構図を使った絵が描けている。

専門的なことを言えば遠近法(パース)の概念を理解しているからこそ、ヘタウマ絵にもその概念を落とし込み、的確な絵を描いているのだ。

一方へたな絵は、ほぼカメラワークが固定されており、それ以外の構図を書くのが苦手ではないかとという印象を持ってしまう。

また、そもそもが下手なので、同じキャラでも別の角度では全く違うキャラになってしまう。それを防ぐために同じカメラワークになっているのだとも推察できる。

いずれにせよ洗練されていない、勉強不足だからこそカメラワークの応用が効かず、必要もないのに同じような構図になってしまうのだと考えられる。

 

ヘタウマは色使いも丁寧&洗練されている。下手な絵は色使いが雑&中途半端。

ヘタウマ絵は色使いが丁寧で洗練されている。アニメ調のシンプルな色合いであっても、無駄な色を使わず的確に表現したいものが表現できている&色に不必要な濁りや汚らしさがなく、見栄えもよい。

一方、下手な絵の場合は色使いが全体的に雑である。例えば、明るく彩度が高い色を多く使っているのに、影になる部分が薄汚れた感じの色を使うなど、せっかくの鮮やかな色を打ち消すような組み合わせで描かれている。そのため、絵全体を見ても色味に統一感がなく、見栄えよりも雑さが目立つのだ。