完璧主義な絵描きが生まれる背景について語る

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一応でも絵で仕事をしている身ではあるが、昨今のSNSにアップして「いいね」などの数字を獲得するのが当たり前の風潮に慣れ親しんでいる絵描きほど、完璧主義に陥るのも無理はないなぁと思うことがある。

とくに、絵のように他人から見て上手い・下手(実際には個性や芸風も加わるが)といった実力がはっきりするものだと、どうしても他人に見せる際にとことんまで完璧を追求してしまうことも起こると思う。

今回はそんなイラストを楽しむ人と完璧主義についていろいろ語っていく。

 

絵描きであればSNSを利用するのが当たり前という風潮が完璧主義者を増やす要因になった

冒頭でも述べたように、今やイラストなり漫画なりを描くという行為は、ただそれだけで終わるものではなく、SNSにアップするまででワンセットである…という風潮が強い。

とくに、アニメや漫画のようないわゆるオタク受けする絵を描いている人であれば、twitterにアップすることは切っても切れないものである。

投稿した絵が思いっきり伸びて、影響力のある「神絵師」になることこそ、絵かきの喜びであり誉である…と考える人もきっと多いはずだ。(余談だが、個人的に「絵師」という呼び名は好きになれない。)

しかし、twitterは既に有名な絵描き、場合によっては絵で食っているプロの絵描きも一緒に存在しているのは言うまでもない。

いわばtwitterは絵描きにとっての情け無用の戦場であり、ロクな装備無しで突撃すれば、ほかのあっという間に多くの絵に流されて埋もれてしまう。当然「いいね」はじめとした数字も獲得できないし、丹精込めて描いた絵…そして、自分自身がそんな惨めな状態になるのは避けたいのが絵描きの素直な心理である。

そのためにも、まずは練習をして実力を高める。そして、完璧を目指して、完璧になって、その上で投稿した作品に数字がつく。おまけに褒めるようなコメントも付く。

こうすれば惨めな思いをしなくて済む…と考えてしまった結果、完璧主義に陥るのだ。

 

もちろん、自分一人で描いて楽しむ…という自己完結をしている人もいるが、私個人の意見としてはオタク受けする絵の界隈では稀である。

絵の分野も幅広く見ていく…たとえば、風景画であったり、抽象画、切り絵、場合によっては砂浜に即興で描いた絵など、「絵」という括り一つ見ても、そのバリエーションは実に様々であるし、そういう絵を一人で楽しんでいる人は、あくまでも私一個人の意見としてはオタクの界隈よりも多いと感じる。

 

絵にツッコミが入るのを恐れて完璧を求めるケースについて

もう一つ完璧主義に落ちるのが、描いた作品に対するツッコミを恐れるあまり、どこの誰からもツッコミが入らないように…と気合を入れすぎた結果、完璧主義になってしまうケースだ。

これも絵をSNSにアップするのが当たり前の昨今だからこそ、起きることだと思うが、投稿した以上は良いコメントばかりが来るとは限らない。中には、鋭い指摘のようなコメントも来るものである。

そして、実力のない人や初心者ほど、そもそもの絵の拙さがどうしても目立つものであるため、ツッコミが来る可能性が高い。

そうしたツッコミを受け流すなり、耐えられるだけの耐性があればいいのだが、以前描いた記事「絵描きのメンタルがなぜ弱いのかについての考察」でも触れたように、メンタルが弱すぎて肯定意見以外はどれも攻撃されていると思う癖がある。

そのため「誰かからツッコミが入らないぐらいに上手い絵が描けるようになってからアップしよう」という心理から、完璧主義になってしまうのだ。

 

なお、場合によってはツッコミを恐れるあまりに

  • 練習の絵ばかりを量産して、自分の作品と呼べる完成した絵を描かないままになってしまう。
  • 完璧な絵を描くための練習方法探しに夢中になって、何も描かないまま終わる。
  • ネットにアップする事そのものをやめるだけでなく、絵を描くこともやめてしまう。

と、完璧主義をこじらせた結果このようになってしまう人もいる。

 

 

最後に

そもそも絵なんて個人的に楽しんだり、趣味の範囲でなら、制約を受けず好き勝手に描けばいいものではあるが、ネット全盛の今だとそうはいかないと思う。

これは私の感覚の話になるが、絵を描く人の多くは何かしらの(特に対人関係における)コンプレックスを抱えており、そのコンプレックスを埋める方法として、絵の道に進むケースが多い。

そのコンプレックスをストレートに克服できればいいのだが、そもそも他人から評価を受けるという行為もまた対人関係の一種である以上、そのコンプレックスをなるべく刺激しないように、でも克服なりコンプレックスを気にしない自分になれるようにと、あれこれ頭をひねる…。

こういう動きが、絵描きが完璧主義に陥る根底にはあるように思う。