「一度しかない人生、他の人とは違う秀でた何かを持った人間になって注目さたい!」というような気持ちに過度にとらわれている人を、ネットスラングでは「何者かになりたい病」と呼ぶらしい。
特にSNSやyoutubeをはじめとしたインターネットの世界にどっぷり使っている人や、生まれながらにしてそれらのネット環境が当たり前のようにあった環境で幼少期を過ごしてきた人には、この傾向が強く見られる。
また、私自身クリエイティブ職なこともあってか、一芸に秀でて収入なりで注目を集めたいと夢見てた人が、精神的に壊れて消えていく光景を、今まで幾度となく見てきた。(その光景は、さながら高みを目指してふわふわ飛んでいったが、途中で壊れて消えてしまったシャボン玉のようである)
今回は、そんな何者かになりたい病の怖さについて、個人的な見解を述べようと思う。
何者かになりたい病の怖さ
平凡な生き方に対して価値を感じなくなり突拍子もない奇抜さに走る
何者かになりたい病に囚われている人は、当たり前の平凡な生活に対して価値を感じられない。ひどい場合は、当たり前の生活をしている人を蔑視したり、キラキラの欠片もない生活しか送れない自分に苦しみ、精神的に不安定になることが目立つ。
また、努力を嫌がる効率を求める傾向も強く、手っ取り早く何者かになって注目を集めたいがために、とにかく奇抜さに走ってしまい、悪い意味で注目を浴びようとする。
最近話題の迷惑系youtuberのように、道徳や法律に不要な挑戦をするような言動に出たり、常識的に生きている人を挑発するかのような言動に出て承認欲求を見たそうとする。
…まぁ、こうなると本人は望んでいないとは思うが「馬鹿者」という役割を手にできたとも言えるので、ある意味願いは叶ったとも言えるが、その代償として社会的な制裁を受けるであろうことは避けられない。
嘘で自分を飾り、自分の魅力を必要以上に水増しする癖が付く
炎上商法のように暴走するまででなくとも、何とかして何者かに手っ取り早くなるために、自分の経歴を盛りまくる。つまり、嘘で自分を必要以上に飾り立てて、自分の魅力やカリスマ性を水増しすることがある。
SNSのプロフィール欄に「/(スラッシュ)」で区切って、全く聞いたことがない肩書きや経歴を羅列する人や、偉人の格言、妙にドラマ仕立てな来歴、「それ本当に実績と呼べるの?」とツッコミたくなるよう実績としての意味を成さないしょぼい実績…など、とにかく自分を大きく見せる癖が付く。(まるで意識高い系大学生・社会人のように)。
もちろん、水増しした自分を正直に信じてくれる人が出てくれば「何者かになれた!」という実感は得られる…が、その代償として、この手の見え見えの虚飾の臭いを感じ取れるような、まっとうに生きている人が寄り付かなくなる事態が起きるのだ。
なお、後述するように関わる人達があまりよろしくない層ばかりになるので、対人能力が身につかなくなるという怖さもあるのだ。
関われる人が悪い方に偏り対人能力が育ちにくくなる
既に成功者なり、才能や実績のある人なり、何者になったかのように自分を盛って振舞う行為は、言い方を悪くすれば見え見えの嘘を見抜けないような頭の弱い人、人間関係や人生経験が乏しくて嘘を嘘と見抜けるだけの素養がない人…のように、対人能力(=コミュ力)に難がある人ばかりとの付き合いが増えてしまう。
そんな難がある人と関わり続けることにより、何者かになりたいと願っている本人の対人能力が磨かれなくなるのが、何者かになりたい病の怖さである。
難がある人と関わり続ければ、嫌でも自分の考え方の癖や生活習慣の癖が影響を受けてしまう。無気力な生徒が集まるような低偏差値の学校に行って、自分もつられて無気力になってしまうだけでなく、無気力であることの怖さが自覚できなくなるのと同様に、関わり続けても対人能力が磨かれないどころか、磨かれない状態を問題だと認識できなくなる怖さがあるのだ。
意識高い系の人が、同じく意識高い系の人ばかりとつるむ。その結果、意識高い系以外の人とは会話ができなくなり、見せかけのコミュ強になるような怖さと同じであろう。
あまり品の良くない人と関係を深めてしまう
少し抽象的になるが、何者かになりたい気持ちが強い人は、現代ならSNSやyoutubeなどで若い頃から自分自身をコンテンツとして発信し、人気と収入を得ることができる。
ただし、これは必ずしも良い未来をもたらすとは限らないと私は考えている。
というのも、若いうち(主に大学生まで)の経験をコンテンツにしても、そのコンテンツに共感を覚えるのは自分よりも若い人、理由があって社会に出てない大人、今の政治や経済に対して不満を抱いている人、現実からの逃避を求めているような人がメインになる。
また、若さゆえの人生経験の乏しさから、本当の意味で自分に成長の機会を与えてくれるであろうインテリ層、育ちの良い人たちの層、社会での地位が高く経験豊富な層、ネットに全く出てこず現実の世界で確かな実績を上げている人達との繋がりを持ちにくくなる。
一言で言えば、あまり品がよろしくなく、心理的に内向きな人が客層になる確率が高いのだ。いわゆる貧困層、無気力層、不遇な人生を一発逆転できそうな甘い妄想ばかりをしている人生をなめくさった人、人格や精神に難がある人…のように、公私ともに関わるとめんどくさい人ばかりを相手に自分を切り売りしていくことになる。
そして、下手に名前が売れてしまうと、収入ほしさに客層変更ができなくなり、めんどくさい属性の人と関わり続けることになりかねない怖さがあるのだ。
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