絵描きが精神を病みやすい理由を客層・働き方・同業者との交流の点から説明する

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この記事は「絵描きのメンタルがなぜ弱いのかについての考察」の続編である。

絵描き…それも漫画やアニメ、イラスト、ゲームなどのいわゆるオタクでサブカルな絵を描くことで収入を得ている方々(=イラストレーターor絵師、場合によっては漫画家、同人作家)と仕事上何度も関わってきた事がある。

その中にはどうも精神的な悩みや弱さを抱えている人に出会うことが、前職(ウェブ制作&ウェブ広告業務)の頃と比較するとけっこう多かった。

今回はそうした私の実務経験を踏まえて、主に絵描きに関わる実務・人間関係の面に焦点を当てて個人的な見解・考察を述べていこうと思う。

なお、この記事では「収入を得ている絵描き」を対象に説明しているが、収入を得ず無料で描いてている人であっても当てはまる部分があるので参考にして頂ければ幸いである。

 

絵描きの客層は「悪い」と言わざるを得ない

私個人の主観で恐縮だが、商売として絵描きを見た際に相手にするお客さんの人間としての質…つまり、客層は悪い傾向にある。

もちろん、全てのお客さんの質が悪いと断言する気は微塵もないが、絵が娯楽や趣味の延長線上にあるような仕事であるということから、お客さんから納期や予算について舐めた態度を取られることは多い。

また、実務におけるコミュニケーションがうまくいかないことも客層の悪さを関係があると考えている。

一例を挙げるとすれば。

  • 途中で音信不通になり業務が滞る&ギャラの回収が難しくなる。
  • そもそも依頼メールの文章の日本語が怪しい。何を言ってる不明なまとまりの無い文章になりコミュニケーションの労力が増える。
  • 依頼メールの情報に最初から不備がある。(例:素性を名乗らないで「いくらでできますか?」みたいなメールが来る。予算・納期の提示が最初から無い。)

などである。

なお、ここにあげた事例は対個人の仕事だけでなく、同業者間の仕事でも割と起こる。全体的に社会常識の通用しない出来事が前職よりも多いという印象だ。なお、私は法人との取引はあまりないのだが、同業者の話では法人間でも同様の出来事が起こるという情報は頻繁に耳にする。

絵かきの仕事は社会一般的且つ常識的でちゃんとしたやりとりができず、スムーズに仕事が進まないというストレスが大きい。スケジュールも心の平穏もかき乱されるという点では、非常に精神衛生上よろしくない仕事といえよう。

 

なお余談だが、この手の客層が悪くなることは私の持論としては学生時代の基礎学力の低さ、集団生活に積極的に交わろうとしなかった結果、社交性やコミュ力が育たなかったことが影響していると思う。

また、学生時代からしっかり勉強する習慣があったり、将来のキャリア形成を考えて行動いる人はそもそも絵かきのような不安定な仕事を最初から目指そうとしないし、そもそもそう言う人たちは将来について何も考えていない人たちが集まるような集団や場面を避けるものである。

そのためか、人材的にも客層的にも比較的難のある人が、半ば現実から逃避するかのように集まるのが絵描きの世界(場合によってはクリエイティブ職全般)ではないかと、同業者を見ていてうっすら感じることがある。

(何度も言うが絵描き&クリエイティブ業界に関わる全ての人たちの人間性が悪いと断言するものではない。)

 

 

多くの絵かきは「下請け」の作業員であり立場が弱く自由も少ない

絵描きとして食っていく場合、その多くは自分から絵を描いて誰かに買ってもらう…というやり方ではなく、むしろ個人・法人から絵の仕事の依頼を受けて納品する…という形になる。つまり「下請け」として食っていく形になるのが大半であり実情である。(もちろんどこかの企業に就職して絵を仕事にするケースもあるが、この記事では自営業(=フリー)を想定しているものとして読んでいただきたい。)

どうも個人的な印象だが、イラストレーターを何か自分の思い通りに絵を描いていける自由でキラキラとして、それでいて知名度が手に入る。まるでアイドルや芸能人に近い仕事の一種だと勘違いしている人ほど、実際に仕事として絵で食っていく場面になった時に「想像していたのと違う!」と感じて精神を病みやすい傾向がある。

それに加えて上でも述べたように、客層の悪さゆえに上品な対応をしてもらえるはずもない。というか無名で同業者間での技術の面でも秀でているものがないとなれば、下請けの中でも条件の悪い仕事を受けざるを得ない。

つまり仕事の自由度が低く、ただマニュアル通りに動くことを求められている安価な単純作業員にならざるを得ないこと理想とのギャップが激しく、精神を病みやすいのだと考えている。

 

 

同業者も精神的に不安定という不幸

絵を仕事にしている人にとって嬉しいのは、同じく絵を仕事にしている人と出会い語らうことだろう。

いくらSNSが普及して絵を仕事にしている人が注目されるようになったとしても、現実世界では絵を仕事にしている人に出会うのは稀。そもそもの社交性の無さが災いして現実世界では基本的に孤独。人間関係に飢えている人からすれば同じ絵かきとの出会いは、まさに幸福の一言に尽きるだろう。

しかし、私はどうもその幸福が決して純度100%の幸福だとは思えない。

というのも上で述べたように、絵かきの仕事は客層の悪さ、立場の悪さゆえに精神的に病みやすい要素が多い。つまり、同業の絵描きから精神的な病みが伝播しやすいのだ。

おまけに同業者以外の関係を持つほどの社交性がそもそも備わっていない事が多いために、病みを発散する場所が「絵に関わるもの」以外では存在せず、神的な不調を悪化させやすい。

こういう考えがあるからこそ、ある意味同じく絵を仕事にしている人との出会いは不幸でもある…と思うのだ。