私自身「いくら心理学の概念とはいえ、HSPは正直バーナム効果ではないか?」と強く思うが、それに反して今やHSPはブームになっている。
かつて発達障害がブームになった時とは比較にならないぐらいのブームである。それも「HSP」を何か金の成る木であるかのように捉えて、リアル・ネット問わずビジネス展開をしようとしている人・集団が目立つ。
私が思うに、どうやらHSPは自己啓発やスピリチュアルビジネスをしていた人たちが、路線変更してHSPで儲けるために猛プッシュしているように感じている。もちろん、そのビジネスについては常々懐疑的ではあるが、売り方や目の付け所、金儲けに関する嗅覚については、なかなかに優秀だと感じている。
今回は、そんなHSPを自己啓発・スピリチュアルビジネスの観点で分析してみたことを語ろう。(※ただし、この記事は自己啓発・スピリチュアルビジネスを猛プッシュする趣旨ではない。断じて。)
HSPは信じていればメンタルに良いと感じやすい概念
まず、HSPは繊細すぎて生きづらいというネガティブな側面があるが、一方で
- 共感力が高くて他人に寄り添える人
- 繊細であるために、他人への気配り、気遣いができる優しい人。
- 繊細さを生かせれば、仕事や人間関係で能力を発揮しうる才能を秘めている人
- 感受性豊かで芸術や表現の分野における才能をを秘めている人
など、聞くだけで自尊心や自己肯定感が高まりそうな印象で語られることが多い。
そんな淡い希望や期待を抱かせてくれる概念。それも海外で提唱された概念で、まだ研究も浅くて新鮮さに溢れている概念である。
歴史の浅さ故にその概念が本当に信ぴょう性のあるものか、まだまだ研究の余地があるので鵜呑みにするのは総計だとか…という真面目なツッコミはせず、とりあえず「自分はHSPなんだ」と信じておけば、それだけで幸せな気分を味わえる概念である。
同じく、心理学・精神医学の概念であるADHD(注意欠陥多動性障害)に見られる「過集中」のような、自分には生まれながらにして特別な才能、何者かになりうるだけの能力があるという淡い期待をHSPは抱かせてくれる。
それも、発達障害のように、社会におけるハンデや重さを感じさせるものではなく、むしろ意識高い系っぽい横文字感、かっこよさ、先進性を感じさせてくれるHSPという概念。それはまさに自己啓発やスピリチュアルのように、利用者の内面を変えたり充実させる色合いの強いビジネス向きの概念だ。そして、金の成る木と言える。
5人に1がHSPなので潜在顧客はかなり多い
HSPは統計上5人に1人いると言われている。(ただし統計手法に疑問点が多く、信ぴょう性は微妙だという意見もある)
純粋に5人に1人だとすれば、日本の人口が1億2000万人と仮定しても、2400万人の潜在顧客がおり、一大市場である。
おまけに、上でも触れたようにHSOは淡い希望を抱かせてくれる概念であるため、顧客自らが「自分はHSPです」と主張しやすい。
つまり、HSPを広めたい側からすれば宣伝広告費が浮く&HSPに目覚める人が増えてもHSPそのもののイメージが良いので堂々と商売ができるというおまけ付きだ。
そして何より、(そもそも精神医学が認めた概念ではないので)病院による診断は不要で簡易チェックリストで誰でも無料で気軽にできるのも魅力的だ。この気軽さこそが、ライト層を取り込める…つまり、顧客増&市場拡大へと繋げやすいのだ。
ライト層も気軽に取り込める。重くなりすぎない自己啓発・スピリチュアルビジネスが展開できる
HSPが広がっている理由として、ライト層を気軽に取り込めることも影響している。
ここでいうライト層とは、いわゆる娯楽目的の心理テストや占いを楽しむ層や、SNSやyoutubeで無料の自己啓発に関するコンテンツを見ている層などを指す。
つまり、繊細すぎて社会生活を送ることすらままならない層ではなく、普通に社会生活を遅れているが、小さな生きづらさや社会への不安を抱えている層に対してもHSPに関するコンテンツを提供、そして販売へとつなげられるのだ。
もちろん、最初は無料のチェックテストのURLを送ったり、無料でHSPに関する動画やあるあるネタを提供していく。この時点で広告収入を稼ぐのもアリだろう。
しかし、いずれはHSPに関する自分の商品やサービス、それも、あまり高すぎないまだ良心的な商品やサービスを展開していくのがビジネスとしては王道だ。
そのための広報活動の側面もあってか、今はHSPに関する好意的且つライト層に受けるコンテンツがネット上に多く提供されている。そして、HSPに目覚める人が増えているのだと分析している。
自己啓発・スピだけでなく、心身の健康、就職・転職・コンサルなど多種多様な展開が見込める
HSPは自己啓発やスピリチュアルといったとっつきづらい商売だけでなく、
- HSPの人が心身の健康を保つ方法を扱ったコンテンツ、サービス
- HSPの人が働くための方法論、就職、転職にまつわるサービス
- HSPの人に向けた人間関係・恋愛関係の指南に関するサービス
- HSPのビジネスマン向けのコンサル、資格取得に関するサービス
- HSPの人同士で交流をするためのサービス、居場所づくりビジネス
- HSPの子供に関する子育て、及び親向けのコンテンツ、サービス
など、いわゆる自己啓発やスピリチュアルよりは胡散臭さが軽減された、幅広い分野へのビジネス展開が可能である。
上でも触れたように潜在顧客の多さ、ライト層の取り込みやすさもあいまって、本業・副業含めこれからHSPで何か一儲けしたい人は、今まさに水面下で動いていることだろう。
なお、ビジネス目的が先行している以上、HSPが心理学的に正しいとか検証の余地があるとかを語るのは、自ら金の成る木の根っこを腐らせるのでまず語らないものだ。
私自身、HSPに対する情報が溢れている中で、HSP関連ビジネスに流されない思慮深さを潜在顧客の方には持っていただきたいと思う。
言い方は悪いが、繊細で生きづらさを抱えている人を飯の種にしたいがために、HSPビジネスに参入している人は、想像以上に多いと感じる。