2020年の3~4月頃から、youtube上でいわゆる胡散臭い広告を見かけることが増えたように思う。
よくある漫画動画による紙芝居式の動画やVRモデルを利用した
- ダイエットや美容に関する広告
- 除毛、脱毛、髭や薄毛など、毛に関する広告。
- 男女の出会い、恋愛、モテなどのコンプレックスに関する広告(子供には見せられない内容も含む)
- 金儲けに関する怪しいビジネスや詐欺、悪徳商法の疑念が拭えない広告
などの広告動画が、以前にもまして増えていると感じる。(もちろん、youtube以外にもニコニコ動画でも同様の不快な広告を目にする機会は増えている。)
その広告のどれもが、スキップまでの5秒間ですらも目にしたくない雑で不快なクオリティである(ここはキッパリ断言する)。下手をすれば広告が表示されている動画投稿者の印象やyoutubeそのものの印象低下も起きうるだろう。
今回はこうした不快な広告が多く流されている事情について、前職でweb広告業務に携わっていた私の経験と知識を元に、いろいろ語ろうと思う。(一応補足だが、私の前職は至ってまっとうな仕事である)
youtubeに不快な広告が増えている理由
まっとうな企業の広告費削減でクオリティの低い広告の露出が増えた
春から自粛ムードが続く&景気悪化の影響を受けて、多くのまっとうな企業は、TVや雑誌、そしてウェブなどのあらゆる広告の出稿を控えるようになっている。
景気が悪くなるのに広告をバンバン出しても、まっとうな企業のまっとうな商品が売れるような状態ではないのは多くの人が理解できることだろう。
多くの人は財布の紐がキツキツなのに、無駄遣いをするだけの精神的・経済的余裕はない。そんな状況にもかかわらず広告費を注ぎ込み、消費を喚起するような真似をすることはまっとうな企業では考えにくい。(もちろん、こういう不景気の時に比較的儲かる業種もあるが、そのことについては後で触れる。)
その結果、本来であればまっとうな企業のまっとうな広告が多く流されているはずなのに、それらの広告が減ってっしまったor消えた。その代わりに、冒頭で触れた胡散臭い広告動画の露出が増えたのである。
言い換えれば、胡散臭い広告動画は東日本大震災後に「ぽぽぽぽーん」というフレーズで話題になったACの広告のようなものである。
もちろん、ACの広告と胡散臭い広告動画を比較すること自体、ACに失礼だとは思うが、あくまでも流す広告がないときに出てくる広告として、胡散臭い広告動画はその役割を発揮しているのだ。
youtubeをはじめとした動画サイトの閲覧数増加&広告出稿の現象により、胡散臭い広告が出しやすくなった
自粛ムードの影響で自宅にいて、スマホやPCで動画サイトを閲覧する人が増えている。これが自粛でも景気悪化でもなければ、この機会を狙って多くの企業がネット上にまっとうな広告を出稿するだろう。
しかし、実情は景気の見通しは悪化し広告費は削減されている。にもかかわらず動画再生数は増えており広告枠は余っている状況だ。
また、youtubeに出る広告はグーグル広告が管理している、グーグル広告では、広告の単価(1再生数あたりの費用)はオークション方式で決められる仕組みになっている。当然多くの出稿がある場合は単価は引き上げられ、逆に出稿が少ない場合は、単価は低くなる。
このことを踏まえると今の状況は、動画再生数増加により広告枠は余っているが、出稿する企業が少ないため、普段より割安で広告が出稿できる。
となると、胡散臭い広告を出しているような規模の小さい会社や個人からすれば、まさに今こそ稼ぎ時となるのだ。
胡散臭い商品を扱っている以上、長いこと続ければボロが出る。なるべく短期集中で稼いで足を洗うなり、別の商品に乗り換えるなり、溜まった資金で新規のクリーンな事業に打って出るほうが賢明である。
そんな短期集中で稼ぎたい広告出稿者兼胡散臭い商品・サービスの提供者からすれば、まさに今のこの状況こそ、千載一遇のチャンスと見ていると私は憶測混じりに考えている。(無論モラルや大義のない商売は外道の極みであるが。)
社会全体が不安だからこそ、胡散臭い広告が刺さりやすい
「こういう非常時に儲かる業種」と上で触れたが、まさ社会不安が強まっており心身ともに疲弊しているこの状況は、言い方を悪くすれば胡散臭い業種の広告が刺さりやすい状況なのである。
心身ともに健康で、多くの人がまっとうな判断力を持てるほどに健全な社会状況なら、この手の胡散臭い広告にそそのかされるような精神状態にはなりづらい。つまり、胡散臭い広告を見て「これいいなぁ」と気持ちが揺らぐような人は出にくい。(ただし、その場合でも胡散臭い商品を売る人は別の手法を使って気持ちを揺るがすとは思う。)
現在は、お金、健康、そして自粛解禁後に新しい生活・暮らしの変化が起きであろうことから、多くの人が何かしらの不安を抱えながら生きている。そうした不安が当たり前のように付きまとい、精神的に弱っているカモが多い状況こそ、胡散臭い広告を出す側からすれば、絶好の狩場なのである。
広告審査の遅延、手薄になっている可能性
憶測・可能性でしかないが、グーグル広告も昨今の自粛ムードの影響で今までのように動画広告の審査ができなくなってしまった。結果、悪質な動画広告を排除できなくなっている可能性があると私は見ている。
いくらAIを使って広告の審査にかかる手間を削減できたとしても、そのAIを管理している人手が不足しているのであれば、広告の審査にも影響が出る。その結果、悪質な広告が一時的に氾濫していると私は考えている。
余談 不景気と資格商法
最後に余談だが、一見すると胡散臭さ感じない「資格取得」と促す広告や情報は、不景気になると出やすいと言われている。
日本人の性かもしれないが「先行き不透明な時代こそ資格を取得して有利な就職を!」という類のキャッチコピーを見ると、ついその資格が仕事において有効なものだとか、一種の社会的なステータスのあるものだと思い込んでしまいがちだ。
もちろん、資格があれば採用時に好材料視され有利に働くこともあるが、一方で仕事にまったく結びつかないような資格を「採用に有利」嘘の宣伝をして集客する悪徳商法がある。これは資格商法と呼ばれており、現在のように先行き不透明な時代に流行する傾向がある。
なお、最近では資格に限らず「プログラミングスクールでスキルを学んで高収入を得よう」という類のスクール系の広告や情報も多く目にする。
もちろんまっとうにやっているスクールもあるが、中には資格取得同様に採用に有利にならないような教育をしているケースも否定できない。
そもそも高収入を謳う時点で誇大広告や優良誤認広告のような気もするので、やたら羽振りの良さ押し出してくるし広告には、どんな広告であれ要注意だと心得たほうが良い。もちろん、広告以外でも個人ブログやSNS、youtube動画でも同様である。
続編
