私が一応若年層であるためか、仕事の人間関係において何かとへりくだった対応をすることが多い。しかし、その時は自分を過剰に卑下しないように気をつけている。
とくにフリーランスなのもあって、自分を過小評価しないことは、自分の技術力を安く買い叩かれないためにも、そして相手に余計な不安や不信感を抱かせないためにも、たとえ若輩者であろうと重要だと私は考えている。
今回はそんな私の経験も踏まえて、なぜ卑下しすぎる行為が相手に失礼なのかについて、個人的な見解を述べようと思う。
過剰な卑下は相手の意見や考えをやんわりと否定しているのと同じ
私がクリエイティブ系の仕事をしていることもあってか、技術だったり経歴に関して評価の言葉を頂くことはそれなりによくある。
しかし、そこで過剰に卑下することは、言い換えれば相手が私を評価してくれたことを否定しているのと同じである。
せっかくお褒めの言葉を頂いたのに「いえいえ、私なんて全然立派でもありません。むしろ、まだまだですし…」というような縮こまった態度を取れば、ぱっと見は立派に謙遜できる人のように見えるかもしれない。
しかし、や意地悪な言い方をすれば、これは相手の善意や好意を受け取ることもなく地面に叩きつけているにほかならない。謙遜の体裁をとって相手を「自分の事を正しく評価していない」と突きつけているようなものなのだ。
なお、ここでいう「正しい評価」とは、自分はそんなに褒められるような仕事をしていないという低い評価を下すことである。
冷静に考えれば、実際に仕事で関わった相手に対して、たとえ事実であっても低く評価することはまずないであろう。仮にそんな低い評価をしようものなら関係がこじれるのは言うまでもないし、お互い不愉快な気持ちになってしまうのも無理はない。
卑下しすぎる人は相手とのコミュニケーションを拒んでいる
もうひとつ感じているのが、過剰に卑下することそのものが、やんわりと相手とのコミュニケーションを拒んでいる行為であるということだ。
過剰に卑下する人は、一応でもコミュニケーションができているだとか、相手に対して敬意を持って接していると思われることだろう。
しかし、過剰な卑下は相手に対して「自分はこういうひねくれた会話しかできません」と突きつけているようなものだと私は考えている。
相手と会話をしているように見えて、その実態は自分のペースに相手を無理やり付き合わせようとしている。会話と言えばキャッチボールのようにお互いの掛け合いで成り立っているものだとよく例えられる、過剰な卑下はただ卑下する言葉(ボール)を相手に一方的にぶつけているだけにすぎなのだ。
一度の会話の中で過剰な卑下を繰り返してしまうことで起きる悲劇
過剰な卑下は一方的なコミュニケーションではあるが、乱暴な言葉遣いもなければ、露骨に見下すような傲慢なものでもない。そのため、相手が明らかにキレるような事態はまず起きない。
しかし、こうした表面的にはまっとうな会話に見えて、内実はモヤモヤが残る会話だからこそ、過剰な卑下は厄介だと私は考えている。
一応でも敬語だとか敬意を表した会話であるため、せっかく評価する言葉を発した人が「あなた、実は私の話を聞いてませんよね?」とか「一方的に卑下してばかり、私の気持ちを考えたことある?」と鋭く切り込むような会話はできないものだ。
ましてや、まっとうに他人と接するだけのコミュ力がある人なら、尚更切り込むような真似は常識的に考えていしない。たいていは「まぁまぁ、そう卑下しなくても…」とか「もっと自信をもちましょうよ」と、自分の評価が否定されたことからくるモヤモヤを吐き出そうとはせず、いわゆる大人の対応を取るものだろう。
それなのに、過剰に卑下する人はせっかく相手が我慢して発した言葉ですらも、過剰な卑下で拒絶する。一度ならず二度もまでも卑下によって相手の好意や善意を拒絶する態度が、失礼に値するのだ。
卑下する意図を相手がしっかり理解できるとは限らないからこそ、過剰な卑下は禁物である
一度の会話の中で何度も卑下してしまうことは、仕事の人間関係で過剰に卑下する人に出会ったり、または自分自身が卑下する癖がある人なら身に覚えがあると思う。
私の交友関係の中で割と多くを占めるクリエイティブ職の人の中には、自分を過小評価する癖がある人が目立つ。シャイな性格ゆえに対人経験が乏しいのだろうか、自分に向けられた良い評価を素直に受け取れず、まるで思春期の学生がやる褒め合い&謙遜合戦のように、過剰に卑下する癖を持っていることが多い。
もちろん、それは上昇志向の高さや理想の高さからくる「自分なんてまだまだです」という前向きな意気込みの現れかもしれない。しかし、そうした意気込みを相手がしっかり理解しているとは限らないし、そもそも相手は自分の意気込みにさほど興味がないことも十分に考えられる。
まだ自分のことをよく理解しあえるだけ親しい間柄でもない人とうまく関わっていく上でも、過剰な卑下をせず、好意や評価をそのまま受け取る習慣は身に着けておいて損はないだろう。